この度NADiff Galleryでは、松江泰治写真集『TYO-WTC』の出版を記念した展覧会を開催いたします。
松江泰治は、山・森・砂漠・都市など、世界各地の「地表」を捉えた写真作品を発表してきました。世界の僻地から大都市までくまなく巡り、場所を探査し地名を収集するように制作した作品には、地名または都市コードのタイトルが与えられています。一貫した制作の手法をもちながらも、進化し続ける写真のテクノロジーの変化とともにあるべき可能性を常に問い続け、自らの作品によってそれらの回答を示してきました。
この度刊行された『TYO-WTC』は、日々転変する都市の表層を同一地点から捉えた松江泰治の最新作です。本作は都市の一隅を撮影した複数の断続的な写真から成り、「定点観測」的手法をとりながらも、時間軸の進行と遡行を構成の中で機微に変化させることで、都市の激しいスクラップアンドビルドの表皮を大胆に提示しています。
「定点観測」の手法を用いながら、時間の順行を伴った風景の変化を想像する私たちの認識を逸脱する『TYO-WTC』は、「定点観測」という方法自体を俯瞰するまなざしによって支えられています。
今回の展示では、最新映像作品“TYO 101354”を上映いたします。2010年から発表されている松江の映像作品は「動く写真」とも評され、一見静止画のようでいながら、細部の変化によって動画であると気づかされる性格を備えています。写真、映像のふたつを等価に捉えた作品から、それぞれの媒体の境界のあり方についての問題提起とともに、「見ること」の驚きを新たに与えてくれるものとなるでしょう。
展覧会初日の11月4日には、「松江泰治流定点観測」と題し、松江泰治、小原真史(IZU PHOTO MUSEUM 研究員)によるトークイベントを開催予定です。どうぞご高覧下さい。
●新刊情報
松江泰治『TYO-WTC』
2013.9 / 赤々舎 / 148×188mm / 並製 / 112頁 / デザイン: 秋山伸 / 3,024円(税込)
●Profile
松江泰治 Taiji Matsue
1963 東京都に生まれる
1987 東京大学理学部地理学科卒業
東京にて制作、活動
《主な受賞》
写真の会賞受賞 (2013年)、東川賞国内作家賞受賞 (2012年)、木村伊兵衛写真賞受賞 (2002年)、東川賞新人作家賞受賞 (1996年)
《主な個展》
「世界・表層・時間」(IZU PHOTO MUSEUM / 2012年)、「jp0205」(TARO NASU / 2012年)、「survey of time」(TARO NASU / 2010年)、「nest」(Amador gallery / 2008年)、「nest」(TARO NASU / 2008年)、「cell」(TARO NASU OSAKA / 2007年) など。
《主な出版》
『jp0205』(青幻舎 / 2013年)、『世界・表層・時間』(NOHARA / 2012年)、『cell』(赤々舎 / 2008年)、『JP-22』(大和ラヂヱーター製作所 / 2006年)、『CC』、『gazetteer』(大和ラヂヱーター製作所 / 2005年)、『In-between7 松江泰治 イギリス、スロバキア』(EU・ジャパンフェスト日本委員会 / 2005年)、『TAIJI MATSUE』(うげやん / 2003年)、『MATSUE Taiji』(ヒステリック グラマー / 2001年) など。