《オープニング・レセプション》
8月4日[木] 19:00-20:30
《トーク・イベント》
8月20日[土] 17:30-19:00『校長先生の夏休み特別講義』
《ギャラリー・トーク》
9月3日[土] 17:00-18:30 田中三蔵×村田真
[田中三蔵 略歴]
1948年生まれ、東京芸術大学美術学部芸術学科卒業後、朝日新聞社入社。高松支局、大阪本社、東京本社学芸部、アエラ発行室を経て、学芸部編集委員。現在、朝日新聞東京本社文化グループ専門シニアスタッフ、日本大学芸術学部大学院非常勤講師、女子美術大学大学院講師。
いずれも NADiff a/p/a/r/t 店内 にて
入場無料(予約不要)※30名様以降は立見となりますのでご了承ください。
●概 要
村田真氏は美術ジャーナリストにしてBankARTスクール校長としてもお馴染みですが、そのかたわらの画業は今までは限られた機会でしか見ることができませんでした。
ジャーナリストとしては平易な語り口で、時に辛辣に、作品から一定の距離を置きながら、だがしかしするどく美術の本質に切り込んでいっている稀有な書き手であります。 これはジャーナリストとして作品を「見る」ことにおいて膨大な件数と時間に裏打ちされていることの信頼だけでなく、実は本人が美大出身の制作者であったことにも大きくかかわっているでしょう。
村田真がふたたびキャンバスに向かい絵筆を手にしたのは6年前のこと。
「描くこと」と「見ること」の往還のなかから、プリミティブだが想像を超える「画家」の仕事が生み出されてまいりました。
例えば《豆腐絵画》。高橋由一の油絵に描きこまれたまな板のうえの豆腐と揚げに注目し、枠にはったキャンバス自体を豆腐に見立てて模写をしたもの。四角い豆腐を2次元で表現した絵画からシェイプド・キャンバスに立体的にトレースしたものといえます。
新作の「世界の巨匠シリーズ」は、この《豆腐絵画》のコンセプトを画集に援用したものです。
また、コスースの《1つと3つの椅子》を引用し、本人の著書『アートのみかた』の現物、それをキャンバスに描いた絵画、および紙粘土に着彩した彫刻、の3つを並べて見せる新作《1つと3つのアートのみかた》。
モダンアートの多分に自己言及的なコンセプトを踏まえつつ、袋小路のその先に立ちながら、とにかく手を動かしながらユニークな思考を突き詰めていく画家・村田真の誕生です。
ナディッフでは画家・村田真の真髄を、作品とレクチャーや推薦図書コーナー《村田真の書棚》を含めて立体的にご紹介いたします。どうぞお楽しみに。
●Artist Statement
絵を描き始めました。
6年前から絵を描き始めました。美大在学中に絵筆を投げ捨てて以来、実に30年ぶりの再開です。といっても30年前は技術的にも精神的にも未熟なまま制作を中断し、その後、絵を描いていた時間よりはるかに長い時間を文章書きに費やしてきたので、再開というより初心者の気分に近いかもしれません。
なぜまた絵を始めたのか。いやその前にまず、なぜ絵をやめたのかから語らなければなりません。当時、70年代はミニマルアートやコンセプチュアルアート、もの派など極限まで切りつめた表現が美術界をおおい、モダニズムが袋小路に陥って身動きのとれない状態でした。もはやノーテンキに絵など描いていられない……と、時代のせいにしてみたくもなりますが、もちろんそれだけではありません。20歳前後の自分のなかでも生きることと表現することとの葛藤が渦巻き、はたして絵を描くことが生の直接性につながるのか、死を超えるにたる絵画制作は可能か、と問いつめたあげく放棄してしまったという面もあります。ま、要するに頭でっかちだったんですね。
いま思えば、そんな青臭い倫理と論理のために、少年時代からの(もっといっちゃえば人類普遍の)「絵を描きたい」という欲望を抑え込んでしまったのは、なんとももったいないことでした。その後、美術ジャーナリズムの世界で文章を書くことによって、「描きたい」という欲望はひとまず解消されたようです。とはいえ、実はこの30年のあいだに時おり「描きたい」という欲望が頭をもたげていたのですが、文章を書くこととの整合性がとれない(つまり両立できない)こと、また、若気のいたりとはいえ一度は制作を放棄した自分に対してオトシマエがついていないとの理由から、制作の再開にはいたりませんでした。
ではなぜこの期におよんで絵を描き始めたのかといえば、もうそんなことはどうでもよくなったからです。開き直りに聞こえるかもしれませんが、50歳を前にして父母をはじめ身近な人たちが相次いで逝くのを目の当たりにして、次は自分かもしれないし、そうでなくても残された時間は少ないと切実に感じるようになりました。はたして自分はなにをやりたかったのか、文字ではなく絵を描きたかったのではないか、ならばいまやらなければもうできないのではないか……。そんな切迫感のなかで、絵を描かない理由などとるにたりないことのように思えてきたのです。
そんなときでした。私もかかわっている横浜のBankART1929の近くの倉庫ビルが共同スタジオとして再利用されることになったのは。さっそく飛びついて一室を確保し、絵を描き始めました。
世界の巨匠シリーズ(2011)
モデルとなった『世界の巨匠シリーズ』は、60~80年代に美術出版社から順次刊行された60巻を超す画家別の大型画集で、版元はAbrams社。白い箱入りで、表面には作品の図版とシンプルな書体で画家名が記されている。
この画集の存在は学生時代から知っていたが、カラー図版の色が悪いうえ別刷りで貼りつけられているのが気に入らなかったのと、なにより非常に高価だったので(徐々に高くなり最終価格8800円)買ったことはなかった。ところが数年前に何人かの画家の解説を書く必要に迫られて古本屋で購入したところ、テキストは古いとはいえ第一人者によるきわめて信頼性の高いものであることが判明。とくに近年は古本屋で安く手に入るため(原価の10分の1程度の巻もある)、ぼちぼち集めていたのだ。
シリーズは第1期50巻に第2期7巻と別巻5巻を合わせた全62巻だが、数が半端なうえ、西洋絵画を語る上では欠かせない「ファン・エイク」も「ルーベンス」も入っていないので、完結しないまま刊行が中断されているのかもしれない。また「カラヴァッジョ」や「フェルメール」は第2期に入っているものの、古本屋でも図書館でも箱のない軽装版しか見つからず、白い箱入り判が出たのかどうかも不明だ。
いずれにせよこのなかから約半数の30巻を自分の「趣味」で選び、先入観を排すため(画集もキャンバスも)天地逆にして制作した。しかし、いくら天地逆に描いても、たとえばエル・グレコならタッチを強調したり、スーラなら点描風になったり、どうしてもその画家の画風に引きずられてしまいがちだった。ま、それはそれでおもしろいものだが。
- 村田真
●書籍情報
作品集『絵画芸術 村田真』
テキスト:村田真 藤原えりみ
2011.8 / BankART1929 / A5サイズ / 24頁 / 200円(税込)
村田真 アートのみかた
2010.5 / BankART1929 / 512頁 / 2,625円(税込)
●同時開催
『絵画芸術 村田真』 8月6日[土]-9月21日[水]
BankART Studio NYKブックショップ|新・港村(新港ピア)ブックショップ(入場にはチケットが必要です)
11:30-19:00 木曜休館
●Profile
村田真 むらた まこと Makoto Murata
1954年、東京生まれ。東京造形大学絵画専攻卒業。
1977年ぴあ株式会社入社、84年に退社。
以後フリーランスの美術ジャーナリスト。
2005年、絵画制作を再開。
2009年、ZAIMギャラリー(横浜)で個展。
2011年、竜宮美術旅館(横浜)にて「任意の点をRとした展覧会」に出品。
●お問い合わせ
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