《オープニング・レセプション》
9月28日[金] 19:00 - 21:00
大橋可也&ダンサーズ、舩橋陽 (音楽) によるパフォーマンスを 20:00 から行います。
©Kyoji Takahashi
90年代前半から広告やファッションの写真によって、カルチャーシーンのなかで若い世代に圧倒的な影響を与えてきた高橋恭司が、その後のおよそ10年の謎のブランクを経て2009年より活動を再開、よりラディカルに、より深く、よりフリーに写真と向き合うべくフィールドに戻ってきた。
高橋恭司のここ数年の活動は、一見オーディエンスの理解を度外視しつつ、写真が強いる思考実験を伴うラディカルなものに向かっている。
路上のマテリアリズムとその反復のような路展「飛伝来」(2010年、渋谷の路上で開催) を行ったり、ゼロックスプリントの可能性をつきつめつつ他人の個展に参加したり、その無軌道極めるゲリラ的活動は時に予告なしに行なれることもあり、90年代の高橋の活動に比較すると大きな転換が見られたと言えるだろう。
高橋恭司の興味の焦点はいま、複写、構成、時間と反復にある。
写真というものはそもそも事物の複写であり、そこに記憶が紛れ込んで物語が構成されてしまうこと、そして見るものはその反復を通して記憶を構成してしまうようなところがある。そうした物語化 (=記憶の構成作用) の引力に切断線を引きながら、意味をはぎとって即物的にものごとを再構成していく。まるでからっぽな反復性の中に潜んでいるアナーキーなものをつかみとろうとするように。
今回の展示では、さらに加えて「複写される身体」が重要なテーマとなる。
大橋可也のダンスカンパニーによるダンスする群像をとらえた抽象的な写真群の拡大複写が、ギャラリーにインストールされる。
高橋恭司は、本人が実はそうであるような高度に思索的な抽象を注意深く取り除きながら、写真家には自身の視覚的、身体的な動作の起動が常に先だってあることを踏まえ、その都度の写真への驚愕と畏れをもっているかのように作品を選択し構成していく。
「複写」と「プリント」を繰り返された表面に多層化する身体が光と影の粗い粒子で再現され、視覚的な快楽と遠い遠い記憶が、そこここにばらばらに配置されていくだろう。
思惟とその反射が表現された「複写される身体」を拡大したさらなる「複写」は、意図した目的地に決して達することはないだろうが、その深淵な無意味の先の向こう側に見る者の視線を誘ってくれるだろう。
企画協力:月刊人 | BANG! Design, inc. / 協力:GO-SUNS、株式会社サンエムカラー / ライティング:HIGASHIX
●新刊写真集
高橋恭司『走幻』
テキスト:桐の進/2012.9.28/発行:月刊人 + NADiff
貼り込み図版・全4種/250部限定/1,867円+税
> 高橋恭司Books
●Profile
高橋恭司 Kyoji Takahashi
1960年、栃木県益子町生まれ。写真家。
主な作品集
1994『THE MAD BLOOM OF LIFE』用美社 (1999 光琳社出版 再版)
1996『Takahashi Kyoji』光琳社出版
1997『Life goes on』光琳社出版
2008『ampm』マッチ&カンパニー
2009『彩宴』対照
『煙影』リトルモア
『流麗』リトルモア
『境間』「桐の進」名義にて発表 リトルモア
『地来矢』高橋 / 鵜飼 マッチ&カンパニー
2011『飛伝来』月刊人
『艶身 (いろか) 』月刊人
『コサージュ』月刊人
『紅砂 (こうさ) 』月刊人
2012『津津と・・・異本 ザ マッド ブルーム オブ ライフ』Contrarede
主な展覧会
2008.8「輪舞」Recto Verso Gallery
2009.11「地来矢 鵜飼悠・高橋恭司」マッチ&カンパニー
2010.12「飛伝来」渋谷・路上
2011.8-9「Cellophane 高橋恭司×尾原史和」RAUM1F
2011.10「艶身(いろか)」三季
2011.12「Pashmina」DEE’S HALL
2012.2-3「津津と・・・異展 ザ マッド ブルーム オブ ライフ」valveat81
2012.6「応唐華」DEE’S HALL