やました あつこ「once upon a time」

営業日:木、金、土、日、祝

営業時間:13-19時 

11月3日(水・祝)は営業いたします。

©やましたあつこ 2021,once upon a time

©やましたあつこ 2021,once upon a time

 

●概要

 
NADiff Galleryでは、国内での数々の個展や国内外でのアートフェアなど、精力的に活動を重ね、近年益々の注目を集める若手作家 やましたあつこの個展「once upon a time」を開催いたします。
やましたは、活動初期より一貫して自分の内生的な物語を柔らかなドローイング的筆致によって描き、私たちが生活のなかで直面する感情の複雑な動きについて探究し続けてきました。今回の個展「once upon a time」では、支持体に和紙を使った初の試みとなる新作と、新たな挑戦として作家自身初となる壁画をNADiff Galleryおよび1F店内にて公開いたします。
作家の最新の創作をご覧頂ける本展を是非ご期待ください。

 

− ピークを通り過ぎてしまうことが怖い?
そう、でも留められない。止まらないんです。
だから、もし私にとって最も評価されるところに到達しても、私はきっと変わると思う。落ちていく方であったとしても変わってしまう。
− やましたさんの世界が順行しているから。
そう。

これは筆者がかつてやましたにインタビューをしたときのやり取りの断片だけれど、ここにある通り、彼女の絵画は絶えず進化している。変化ではなく、まして変貌でもなく変質でもなく、まるで昨日が今日になるように、やましたあつこの絵は進んでいく。というのは、その作品が本人の妄想の世界を描いたものであるから。彼女が生きている限り、その妄想は膨張して順行し、それに伴うように絵も進んでいく。

今回の作品だって、前までの厚塗りのオイルペインティングからガラリと性格を変えた。本人は「日本画のようだ」と話しているけれど、パネルに和紙を貼り、顔料をふんだんに使った画面は、まるで砕けた星のカケラをちりばめたように粒子的で、そして光り輝くテクスチャーに進んだ。これを例えば、日本画特有の美化した自然を描く傾向と彼女のパラノイアな理想世界を描くことと比べることも、たぶん出来なくはないんだろう。

登場人物の変化だってそうだ。もともとはパストラーレな、まるで『ダフニスとクロエー』のような世界で愛し合う二人だったのが、今回は片方の姿が動物に変わった。これは彼女がズーフィリアの本を読んだことがきっかけで、曰く「これもいいんだ」と思ったからだと言うけれど、とはいえ、そこに因果関係を結びつけることは少し違う気もする。「やましたあつこは深層心理はこれこれだ」とか「日本画のこれこれと関係がある」とか、そういう深読みも出来なくはないし、するのはもちろん自由だろうけれど、特に意味があるようには思わない。

だからといって彼女に一貫性がないわけではない。信念がないわけじゃ、決してない。やましたあつこは一貫して「邪魔のない幸せ」を絵画にしていて、今回のズーフィリアへの賛意も、ただそれを否定することの根っこにある偏見が、彼女の幸福論にとって邪魔だからに過ぎない。やましたの絵画は絵解きではなく、つまり絵によって何かの議論に介入することもないし、訓戒を垂れたりするものでもなく、美術のための美術というか、現代美術の歴史を云々する類のものでもなく、あえて言うとしたら、一種のシェアリングかもしれない。

かつてフェリックス・ゴンザレス=トレス(詳しくは自分で調べてほしい)が「エイズへの偏見を攻撃するより、それによって亡くなった人たちを悼もう」という風に、ある時代や社会、特定の現象下で生まれる気持ちを分かち合うことを美術によってやって見せたように、タイプはまるで違うし内容も全く違うけれど、やましたの絵画も、その中にある世界を共有することに意味があるように思える。その世界に入り込み、もしくは自分を投影し、描かれた線と色合いから何かを探りあて、そうして一つのささやかなリアリティを得て、やがて日常に帰っていくというような、一種の儀礼にも似た絵画体験を提供することに、きっと意味があるんじゃないだろうか。自分の世界を失ってしまった人、もしくは現実を肯定できない人、生きることにリアリティを感じられない人にとっては、きっとonce upon a timeというか、どこでもないし、実際にあるのかも分らない、一つの世界が必要なのだ。ちょうど、やましたあつこの絵のような。

奥岡新蔵


 

●作品の販売について

 
10月14日[木]13時よりOIL by 美術手帖サイトにて、個展「once upon a time」ではお披露目ができなかった新作5点を販売致します。
>> OIL by 美術手帖サイト (販売ページは発売日時より公開となります)


 

●PROFILE

 

やました あつこ

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1993 愛知県生まれ
2018 東京藝術大学 美術学部絵画科油画専攻 卒業

個展
2021 「やましたあつこ新作展示」銀座 蔦屋書店
2020 「Utopia」TAKU SOMETANI GALLERY 、「パン屋と絵 #11やましたあつこ」ドイツパンの店タンネ
2019 「HER」TAKU SOMETANI GALLERY、「Dis-appear in Light」中目黒epulor、「君の名前で僕を呼んで」MAKII MASARU FINE ARTS
2018 「In the flower garden」MAKII MASARU FINE ARTS

グループ展
2021 「TAION」スパイラルガーデン、「交差点 いま、ここからの」Bunkamura gallery
2020 「燦三と照りつける太陽で、あつさ加わり体調崩しがちな季節ですが、規則正しく健やか奈日々をお過ごしくださ
い。」西武渋谷
2019 群馬青年ビエンナーレ2019 群馬県立近代美術館
2018 シェル美術賞 新国立美術館、チャリティーオークション「3.11チャリティーオークション@3331 ART FAIR 2018」、ワンダーシード2018 トーキョーアーツアンドスペース本郷
2017 群馬青年ビエンナーレ2017 群馬県立近代美術館

賞歴
群馬青年ビエンナーレ2019 入選
シェル美術賞2018 藪前知子審査員賞
ワンダーシード2018 入選
第4回CAF 賞 入選
群馬青年ビエンナーレ2017 奨励賞
ターナーアワード2016 優秀賞

パブリックコレクション
「2人だけの夜」愛知県美術館
「ままごと」愛知県美術館


 

●新型コロナウィルス感染予防対策

 
【お客様へのお願い】
・ご来場時にはマスクの着用をお願いいたします。
・ご来場時には手指の消毒をお願いいたします。
・37.5℃以上の発熱や咳、全身痛などの症状がある場合、ご自身の体調に不安のある場合は、くれぐれもご無理なさらずご来場をお控えいただきますようお願い致します。
・お客様同士およびスタッフとの距離を十分に取れる空間確保のため、入場制限を設ける場合がございます。
・大人数でのご来場はなるべくお控えください。
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【当店の対策】
・1階の店内入口にアルコール消毒液を設置しておりますので、入店の際は手指の消毒をお願い申し上げます。
・地下1階の搬入口の換気をし、展覧会会場の換気を行います。
・2時間に1度、螺旋階段の手摺や、鑑賞用の椅子のアルコール消毒を行います。
・当店スタッフは毎朝体温を測定し、健康状態を確認のうえ出勤しております。手洗いと手指消毒を徹底し、マスク着用で対応いたします。
 
>>営業時間・店内での新型コロナウイルス感染症の予防と感染拡大防止対策について
 


 

●お問い合わせ

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150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 1F
TEL. 03-3446-4977


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