連続講座:宗達を検証する

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作品の構図や描法など、俵屋宗達の絵画技法の分析をするばかりでなく、その絵が何を描き、どこが面白いのかという、主題と趣向について解き明かします。また、未だ知られざる絵師宗達の人間としての真実に迫りたい、宗達の生きた桃山から江戸初期の時代相や文化の特質を、宗達を通じて知りたいというのが目的です。
 本講座では、宗達の長年の友人、京の豪商で古典学者、古活字版「嵯峨本」プロデューサー・ディレクター・活字書体デザイナー、優れた書家でもある角倉素庵(すみのくら・そあん、1571~1632)の新視点から、従来の「宗達」の定説を検証します。こころを自由にして宗達作品に向き合い、楽しみながら考えてみたいと思います。──── 林 進



 俵屋宗達(~1630年活躍~)が美術史のなかで再発見されてから既に100年余が経ち、彼をその祖とする所謂「琳派」がその名称で一般化されてからも半世紀以上を経ようとしています。山根有三氏(1919~2001)をはじめとする多くの美術史家が、日本美術史史上最大の画家の一人と認められる宗達像を明らかにしようと挑戦し、膨大な成果を上げたことは事実でありますが、今も変わらず生没年やその生涯が未詳の謎の画家であることも、また事実です。
 平成14年(2002)、奈良の大和文華館で開催された特別展「角倉素庵―光悦・宗達・尾張徳川義直との交遊の中で―」展において、角倉了以の子、素庵との交流から必然的に浮かび上がる俵屋宗達像に迫った同展企画学芸員であった林進氏は、以来十余年、その研究を継続深化させています。その宗達像は学会の定説や一般に流布されている諸説とは多くの点で異なる見解に至っています。
 本講座はその林進氏を迎え、2期10回の連続講座を開き、新発見の資料や、既存資料の新解釈をもとに、これまでの諸先達の論や、その論の拠っている資料を検証し、より一層の宗達理解に辿り着こうとします。
 講座の対象者は専門研究者のみを対象にするのではなく、より広く解放することによって、その成果を出版物として世に問うことも企図します。
 この企てにより、新たな宗達像がより詳細かつ鮮明に浮びあがるばかりでなく、一般に流布されている「本阿弥光悦」像や、上層町衆論偏重に再考を促し、400年前の京都で生きた人々に生の息吹を与えることになります。そしてその時代を代表するはずの人物で、学問、実業、文化の分野に多くの足跡を残しながら、その宿痾の病によって歴史から後退せざるを得なかった角倉素庵像が巨大な姿を現すことになるでしょう。素庵は俵屋宗達の心腹の友であり、その姿は国宝「風神雷神図屏風」の左隻に白い雷神として描かれています。
 定説が覆されるスリルと、絵を見ることの知的楽しさや興奮を共有しましょう!



前期:


2013.6.22[土] 

序章 宗達画のかたちとこころ
重要文化財「田家早春図扇面」を読み解く

7.27[土] 

「宗舟・平次宛 角倉素庵書状」(個人蔵) から見えてくる絵師宗達の実像
宗達の居住地と社会的基盤について

8.24[土] 

国宝「平家納経」慶長7年 (1602) 補作の表紙絵・見返絵
誰が描いたのか、その絵に込められた意味とは

9.28[土] 

重要文化財「金銀泥鶴下絵三十六歌仙和歌巻」
和歌は誰が揮毫したか、下絵のテーマは何か

10.19[土] 

古活字版・整版本「嵯峨本」の成立と展開
活字書体設計家としての素庵、装飾料紙作家としての宗達

後期:

11.16[土] 

国宝「蓮池水禽図」
宗達絵画の『時間』について

12.21[土] 

重要文化財「西行物語絵巻」(宗達模写、出光美術館) の改変
西行往生の場面における『無常』の表象について

2014.1.25[土] 

紙本金地著色「楊梅 (やまもも) 図屏風」(個人蔵) の様式と主題
「一条兼遐 (かねとう) 書状・後水尾院勘返状」(個人蔵) に言う「楊梅之屏風」との関係

2.22[土] 

重要文化財、養源院の襖絵「松岩図」・杉戸絵「白象図ほか」
制作の依頼者、趣旨、制作年について

3.22[土] 

国宝「風神雷神図屏風」と益田孝旧蔵「伊勢物語図色紙」(全36面) の成立
その制作年と制作意図に共通するものとは

時間

各回とも14:00~15:30 / 10月19日、3月22日のみ14:00~16:00



会場

Bunkamura B1特設会場 (ナディッフ モダンからご案内致します)



講師紹介

林 進 (はやし・すすむ)
1945年香川県直島町に生まれる。1969年神戸大学文学部卒。1972年同大学大学院修士課程修了。2000年文学博士 (神戸大学)。1971年大和文華館学芸員、2002年神戸大学大学院客員教授を経て、現在、関西大学・大手前大学非常勤講師。(専攻) 日本美術史、書誌学。(著書)『高麗仏画』(共著、朝日新聞社、1981年)、『雪村』(共著、講談社、1995年)、『日本近世絵画の図像学―趣向と深意―』(八木書店、2000年)、『伊勢物語絵巻絵本大成』(共著、角川学芸出版、2007年)、『宗達伊勢物語図色紙』(共著、思文閣出版、2013) など。



受講料

前期 (5回)、後期 (5回) 1期10,000円 定員30名
各回ごと 2,500円 若干名  満員御礼・予約締切



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