この度NADiff Galleryでは、写真家・神藏美子の写真集『たまきはる』の発売を記念した展覧会を開催いたします。
自らの三角関係を綴った写真、そして手記によって、赤裸々なまでに私生活を記録した作品で、大きな衝撃と話題を呼んだ写真集『たまもの』(筑摩書房・2002年) から12年ぶりの発表となる最新作 『たまきはる』。12年間の歳月の中で起きた出来事から、他者を通して自己と向き合う葛藤を吐露し、 聖書と「神様」の存在に触れてゆく心情を綴る、神藏自身の生の在り方と分かちがたく緊密に結びついた渾身作です。
本展では写真集『たまきはる』から、「父の死」という出来事を題材に構成いたします。会期中にはアート・コーディネーターの内田真由美氏とのトークセッションも開催します。
協力:リトルモア
Artist Statement
ほんとうに自分の興味のあるものから作品が生まれるということを信じて、十二年間『たまき はる』に向き合ってきました。世界のベストセラーである聖書を、キリスト教という宗教の世界 からではなく、イエスの方舟の千石剛賢氏の聖書解釈に出会ったことから、探求してきまし た。自分が出会った、寺山修司さん、障害者プロレスのがっちゃん、独立教会の牧師だった 田中小実昌さんのお父さん、野田凪さん、銀杏BOYZ、etcさまざまな方々や、夫である末井 昭との関係性の中から、救いを求めて聖書に向かいあっていました。
その時間のなかで、父を亡くしました。「父の死」は、期せずして『たまきはる』の一つの軸に なっています。病院に運ばれた父の死の瞬間から、家にもどった父、葬儀、四十九日、と続 く時間のなかで、肉親を亡くすということは、崖から落っこちてゆくように、悲しい淵へ連れて ゆかれることでした。しかし、喪のかなしみを知ることは、そこから照らしだされる愛につい て、愛とかなしみを与える神について、おぼろげにわかることでした。
───────── 神藏美子
写真家、神藏美子が『たまもの』をこの世に産み落としてから12年、新たな生命が神藏の胎内から生まれでた。授けられた名前は、生命 (いのち) の枕詞である『たまきはる』。写真と文章によって紡がれるこの写真集は、神藏の私写真であり、私小説である。その息づかいが生々しく迫り、深い余韻を残す。
身近な人々の死、父の死。満たされるべき夫・末井昭との暮らし。他者との関わり、結びつき。 不安感と喪失と孤独。「救いを求めるような孤独感や、しあわせになれないという焦燥感にかられた」 神藏が聖書と出会い、心のよりどころを求めて、聖書をひもといてゆく。神様の存在、聖書の真の意味を、日々の生活のなかで自問し、追い求める。
生きることの苦しみ、痛み、悲しみ。ときに、自分の内に抱え持つ、とがった刃が自身に突き刺さる。心に渦巻く感情にあらがい、沸き起こる感情とせめぎあう。その苦悩と葛藤の日々が、痛々しいほどに胸を打つ。
神藏が、率直に、ストレートに、心情を吐露するこの写真集は、“私”を再生する、“生”の物語である。生きてゆくことは、なんと切ないことか。生みの苦しみの末、この世に生を受けた『たまきはる』。 心に刻まれ、心を揺さぶられる写真集である。
内田真由美 (アート・コーディネーター)
●EVENT
TALK EVENT
日時:2015 年1月10日[土] 16:00 - 18:00
出演:内田真由美 (アート・コーディネーター) ,神藏美子
場所:NADiff a/p/a/r/t 店内 にて
入場無料 (予約不要)
※30名様以降は立見となりますのでご了承ください。
※イベントは終了いたしました
●新刊情報
神藏美子『たまきはる』
発売日:2015年1月発売 / 会場先行販売予定
出版社:リトルモア
仕 様:B5横 / 並製 / 232頁 / 文章60頁 / 写真168点
デザイン:松本弦人
ご予約受け付け中 / ご予約特典:神藏美子署名本
価 格:3,000円+税
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●Profile
神藏美子 Yoshiko Kamikura
東京生まれ。
慶應義塾大学文学部国文学科卒業。『Naturita』 (I.P.C) で日本写真協会新人賞受賞。
『たまゆら』(マガジンハウス)『たまもの』 (筑摩書房)
内田真由美 Mayumi Uchida
アート・コーディネーター。
三重大学教育学部美術科卒業。
新聞社、出版社、ギャラリー勤務を経て、フリーランスで活動。企画、コーディネートした主な展覧会・プロジェクトに「第2回大地の芸術 祭プレイベント〈天空散華・妻有に乱舞するチューリーップ~中川幸夫“花狂”〉」(02年)、「草間彌生 クサマトリックス」(04年 森美術館)、「荒木経惟 東京人生」(06年江戸東京博物館)、「ネオテニー・ ジャパン―高橋コレクション」(08-10年上野の森美術館など7館巡回)、「梅佳代写真展 ウメップ」 (10年 表参道ヒルズ) ほか。