アルトウーロ・シュワルツによる歴史的大著「マルセル・デュシャン全作品」の改訂新版が25年の歳月を経て刊行されました。それを機にナディッフでは、デュシャンの版画作品、オブジェ、ポスター、展覧会カタログなど、現在となっては入手困難な作品と資料をあつめて[マルセル・デュシャン/作品と資料]を開催いたします。
20世紀最大の前衛芸術家であったマルセル・デュシャンが現代芸術に与えた影響は計り知れません。戦後アメリカ美術の源泉としてはもとより、二つの代表作「大ガラス」、「遺作」を取り巻く多くの謎、そしてそれらをめぐる論考の数々。デュシャンを核とするネットワークの総体がプログラムしてきたものは、紛れもなく同時代としての20世紀の表現とその在り方という根本的な命題そのものだったといえるでしょう。没後30年近く経った現在においてもデュシャンの影響力は衰えることなく、様々な局面で引用や転位を繰り返しながらリファレンスされ続けています。
今回出版された「マルセル・デュシャン全作品」(改訂新版)は今世紀最後の、最大の、そして最新の「デュシャン研究」に関わる大著であるといえるでしょう。その全体からみればささやかな展示であるとしても、新たな資料の前でデュシャンの個々の作品を、皆さまとともに再度確認してみたいと思います。
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