描線のインスタレーションで知られる鯨津朝子。そのバックボーンには、日々描くドローイングの中に蓄積された時空の記憶があります。「毎日毎日、自分の線を描く」彼女にとってそれは最も基本的な行為であり、立ち向かうべき方向を確認する作業そのものといえます。昨年、ダイムラー・ベンツグループの「ガスコーニュ・ジャパニーズ・アート・スカラシップ」派遣アーティストとしてフランスに滞在し、アジャン美術館において展覧会を開催。「自分の時間の堆積」と「建物の時間の堆積」を向い合わせるという試みに挑みました。その時、その場所からインスパイアされたものをしなやかなドローイングで表現する鯨津朝子が、ナディッフのギャラリー空間から、さらに実験的な一歩を踏み出します。
『フィラメント・フラグメンツ』
風が破断線を孕らむ時、光が線をひく時、踊りが軌跡を残す時、鯨津朝子は、動きを線に記憶する。記憶は意識の中で、手の中で層をなし、鯨津朝子が日々に描くドローィングラインに、微妙な変化をもたらす。新作『フィラメント・フラグメンツ』は、煌めく灯台の光の航跡がモチーフとなっている。クリスタルの窓に遮られた光が、乱反射を起こし、破断線となって散らばっていく。(今野裕一)
■ギャラリー・トーク
8月28日(土)午後3時
「これまでの活動について、新作について」 出演:鯨津朝子 + 今野裕一
■カフェ・ジャンクション
9月4日(土)午後6時
昨年9月のギャラリー日鉱における鯨津朝子の制作プロセスおよび会期中に行った片上守のダンス・パフォーマンス「風を歩く−walking in
the wind−」のビデオを上映。DJによるサウンド・パフォーマンスも併せて行う。
■ミニコンサート
9月11日(土)午後6時 出演:野村誠&P-ブロッ
“ペヨトル・メモリアル 1980-98”のミニコンサートがきっかけとなり、初の CD-Book「路上日記」をリリース(6月9日/ペヨトル工房)した野村誠が、鍵盤ハーモニカの仲間とともにナディッフに乱入する。 |