“横浜トリエンナーレ2001”で注目されるアーティストの一人、イチハラ ヒロコの展 覧会『万引きするで。』を、“横浜”の会期と並行して開催いたします。ことばによるメッセージを作品化するアーティストは内外に数多く存在しますが、イチ ハラヒロコのそれは、日本の今を生きる人々の息づかいを如実に体現しているといえるでしょう。「この人ゴミを押しわけて、はやく来やがれ、王子さま。」や「自分のことは棚にあげよう。」「かなわない夢ならあるぜ。」といった、イチハラの一連の作品は、川柳のセンスとも無縁ではありませんが、むしろ現代社会に氾濫する広告のキャッチフレーズとの近親を感じさせます。日常の中で交わされる言葉やふとした瞬間にこみ上がる感情を切りとり、独特のひねりを加えて取りだした「ことばの表現」を、イチハラは太いゴチック書体で、白地に黒でレイアウトします。しゃべり言葉から声の表情が消え、書き文 字から筆跡の表情が失われて一律に配列された「ことば」は、無個性であるがゆえに「ことば」の真意を視る者に突きつけます。「万引きするで。」と印刷された紙袋がショップの中で主役となる今回の展覧会は、展示そのものが一つのギャグであり、来店者を巻き込んで「ことばの表現」がもつ本質的な意味を増幅させてゆくものです。会期中のNADiff店内には、ユーモアに溢れた空気感が漂うことでしょう。“横浜”と併せてご覧いただき、イチハラヒロコの作品の広がりを体感していただければ幸いです。 |