インスタレーションを手法として確立しつつ、建築空間に侵入・異化することから、都市へ世界へとそのプロジェクトを展開してきた川俣正。「美術」という言葉が溶解しつつある現在、川俣は社会的な枠組みや日常的な作業の中にアートの可能性を求め、あえて「アートレス」と呼ぶことで既存のアートからの自由を確保しようとしています。今回野外の現場からギャラリー/美術館に場所を移し、従来の仕事とは一線を画した新しい手法によるプロジェクト「デイリーニュース」を試みます。ナディッフではプロジェクトの一環として、同名のアーティストブック『デイリーニュース』の制作プロセスを素材にインスタレーションを行います。日誌、講演会録、対談録、ドキュメント写真、手紙、メモ等昨年9月から今年9月に至る活動全般をベースに、進行中の『デイリーニュース』をライブ公開し、文字通り「ブック・イン・プログレス」の状況を創出。さらに完成したアーティストブックは、他の要素とともに「デイリーニュース」(水戸芸術館現代美術センター)の展示にプログラムされることになります。川俣正の新たな試みは、アートの可能性とその在り方を果敢に問いかけるものとなることでしょう。
川俣 正 KAWAMATA TADASHI
1953年生まれ。東京芸術大学美術研究科博士課程満期退学。学生時代から数々の個展、グループ展を行なう。1982年第 40回ヴェニス・ビエンナーレ参加。以後、
奨学金を得てニューヨークに滞在。その後各国のアーティスト・イン・レジデンスに滞在しながら現地制作を行なう。1987年ドクメンタ(カッセル)、サンパウロ・ビエンナーレ、1997年ミュンスター彫刻プロジェクト、1998年シドニー・ビエンナーレなど多くの国際展に参加。プロジェクト主導の現地制作を主とする作品制作で海外、特にヨーロッパでコン
スタントに発表している。多くの作品は一時的な仮設設置のため、プロジェクトのプラン、模型などが国内外の美術館にコレクションされている。2000年日本文化
芸術振興賞受賞。著書に『アートレス』(フィルムアート社、2001年刊)がある。現在、東京芸術大学美術学部先端芸術表現科教授。
■ギャラリートーク:11月16日(金)午後6時30分
出演:川俣正、森司(水戸芸術館現代美術センター学芸員)、村田真(美術ジャーナリスト)
川俣 正 デイリーニュース
水戸芸術館現代美術ギャラリー 2001年11月3日(土・祝)→ 2002年1月14日(月・祝)
新聞紙、作家がクリップした報道写真、作家が手掛けた過去20年間のドキュメント・パネル、プロジェクト資料、刊行されるアーティストブック『デイリーニュース』の5つの要素によって構成される新しいプロジェクト「デイリーニュース」の全貌を展示いたします。
・アーティストトーク:11月3日(土・祝)午後2時30分 トーク:川俣 正
・【3DaysKAWAMATA講座】11月23日(金)、24日(土)、25日(日)/要予約:029-225-3555
プログラム:村田真(美術ジャーナリスト)
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