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―「芸術」の概念が日本に輸入されたのは明治時代に過ぎない。大きな変化がもし起これば、「芸術」が消えてしまう可能性だってある。それでも、なお、「芸術」にこだわるのであれば、その核心部分として何を守るべきなのか−(「前衛のゾンビたち」より) この度NADiff a/p/a/r/tでは、藤田直哉 編・著『地域アート――美学/制度/日本』出版刊行を記念したトークセッションを2週連続で開催いたします。 日本各地で展開されている地域振興のためのアートプロジェクト批評を展開した、文芸誌『すばる』2014年10月号(集英社)で発表された藤田直哉の論考「前衛のゾンビたち――地域アートの諸問題」は、今日の我々の「芸術」をとりまく環境に一石を投じた批評として大きな反響を呼びました。 藤田は論考の中で、「地域アート」の隆盛によって、芸術が芸術にしかできない固有の価値を探す以前に、何かの役にたつことが中心的な価値になろうとする気風を醸成し、芸術が政策や社会運動などに回収されつつある状況の問題点を指摘しています。2000年代以降から現在に至るこの国のアートの一大勢力「地域アート」というムーブメントについて、叛逆精神(1968年を参照した際の)を欠いた前衛的形式だけが反復された廃墟だと言及し、そこで生き延びようとする「前衛のゾンビ」によって我々の芸術の価値や概念が大きく変動しつつあり、それはいずれ芸術が消失してしまう可能性ももたらすのではないかと、論考の中で痛烈な懐疑を展開しています。 この論考が事の発端となり2014年の冬、「地域アート」についての賛否についての議論や様々な意見がSNS上で活発に交わされ、人々が「地域アート」に抱いていた問題意識が公に明示された大きな契機となりました。本書はその動向を引き継ぎつつ紙上に展開させ、多くの論者とともに現場と理論を往復しながら書物として纏められました。 今回開催するイベントでは本書の参加者を招いた2部構成とし、本書を基盤としながら芸術と地域振興をめぐる問題を複数のフレームから検証し、今日の芸術・社会批評の視座を新たに切り拓く場を設けようとするものです。 |
新刊情報 |
藤田直哉(編著)『地域アート―美学/制度/日本』2016年3月10日発売
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Profile |
藤田直哉(ふじた・なおや)1983年生まれ。SF・文芸評論家。東京工業大学価値システム専攻博士(学術)。単著に『虚構内存在 筒井康隆と〈新しい《生》の次元〉』(作品社、2013年)、共著書に『文化亡国論』(響文社、2015年)、『ビジュアル・コミュニケーション――動画時代の文化批評』(南雲堂、2015年)など。 |
北田暁大(きただ・あきひろ)1971年生まれ。東京大学大学院情報学環教授。著書に『責任と正義ーーリベラリズムの居場所』(勁草書房、2003年)、『嗤う日本の「ナショナリズム」』(日本放送出版協会、2005年)など。社会の芸術フォーラム共同代表。 |
田中功起(たなか・こうき)アーティスト。1975年栃木県益子生まれ。2005年東京芸術大学大学院修士課程修了。台北ビエンナーレ(2006年)、第7回光州ビエンナーレ(2008年)、「映画をめぐる美術」(京都国立近代美術館・東京国立近代美術館、2013〜14年)、「ジャーナル」(ICA、ロンドン、2014年)、「ポジションズ」(ファン・アッベ美術館、オランダ・アイントホーフェン、2014年)など多数のグループ展に参加。2013年のヴェネチア・ビエンナーレでは、参加した日本館が特別表彰を受ける。ドイツ銀行グループの2015年「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」に選出。出来事の体験とその映像記録を体験することとの差異、映像の編集過程で生まれる元の出来事とのズレなど、プロジェクトを記録し編集したヴィデオ作品を通じて、記録と記憶を巡る多様な問題の考察を続けている。著書に『田中功起「質問する その1(2009-2013)」』(アートイット、2013年)。 |
加治屋健司(かじや・けんじ)京都市立芸術大学芸術資源研究センター准教授。1971年生まれ。専攻は現代美術史、表象文化論。共編著にFrom Postwar to Postmodern, Art in Japan 1945 − 1989: Primary Documents (New York: Museum of Modern Art, 2012)、『中原佑介美術批評選集』全12巻(現代企画室+BankART出版、2011年〜)、『広島アートプロジェクト2008「汽水域」』(広島アートプロジェクト、2009年)、『旧中工場アートプロジェクト』(同、2007年)、共訳書に、イヴ=アラン・ポワ、ロザリンド・クラウス『アンフォルム 無形なものの事典』(月曜社、2011年)。 |
清水知子(しみず・ともこ)筑波大学人文社会系准教授。愛知県生まれ。専門は比較文学、文化理論、メディア文化論。著書に、『文化と暴力――揺曳するユニオンジャック』(月曜社、2013年)、『労働と思想』(共著、堀之内出版、2008年)、訳書に、アントニオ・ネグリ/マイケル・ハート『叛逆――マルチチュードの民主主義宣言』(共訳、NHKブックス、2013年)、ジュディス・バトラー『自分自身を説明すること』(共訳、月曜社、2008年)、スラヴォイ・ジジェク『ジジェク自身によるジジェク』(河出書房新社、2005年)など。 |
星野太(ほしの・ふとし)東京大学大学院総合文化研究科特任助教。1983年生まれ。専攻は美学、表象文化論。共著に『人文学と制度』(西山雄二編、未來社、2013年)、『コンテンポラリー・アート・セオリー』(筒井宏樹編、イオスアートブックス、2013年)など。共訳書に、エイドリアン・フォーティー『言葉と建築――語彙体系としてのモダニズム』(鹿島出版会、2005年)、カンタン・メイヤスー『有限性の後で――偶然性の必然性についての試論』(人文書院、2016年)など。 |
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