タブロイド版批評紙『Na+』:2011年2月6日[日] 発売開始 / 500円(税込)
ナショナリズムは国家の形成や変遷と共に、多様な流れを生みだしてきました。一つの時代をとっても、それぞれの国のナショナリズムが、互いに影響し合いながら力を強めることも、また、一社会の様々な勢力の間で同じ事が起きる場合もあります。
近代国家というシステムがある以上、全てのナショナリズムが間違いだと括ることはできません。しかしそれは、「私たち」の結束力の源となりうると同時に、国家の基盤の一つして構築される、国民文化やナショナル・アイデンティティーについての批判的考察を深化させることなく、「私たち」の対岸にいる「彼ら」への想像力の欠如や、排他性、無関心を引き起こしてしまう危険性を持ち合わせています。その上、ナショナリズムは、国家という枠組みの中で生きる我々の感情や帰属意識に働きかけるため、自らの中にあるナショナリズムを冷静に見つめる事は容易ではありません。
この問題について取り組むためには、国家とはどのような共同体であり、「ナショナル・アイデンティティー」や「他者」はどう構築されるのかについて、そして我々がどのような主体として、国家や他者と対峙しうるのかという問題について考察する必要があります。
このプロジェクトでは、アーティスト、キュレーター、研究者等、現代美術とその言説の創出に関わる人々が、文化生産、政治、市場経済、言説のみならず、個々の主体に現れるナショナリズムに対峙し、多様な形式のテキストや視覚表現で発信する試みです。
執筆者:足立 元/飯田志保子/伊奈英次/遠藤水城/奥村雄樹/オリビエ・クリシャー/片岡真実/兼子沙都子/神谷幸江/倉茂なつ子/小泉明郎/佐々木加奈子/管啓次郎/杉田 敦/鈴木佑也/田中功起/チェ・キョンファ/手塚夏子/照屋勇賢/沼下桂子/原田 晋/藤井 光/藤高晃右/星野 太/松原 慈/光岡寿郎/毛利嘉孝/森 弘治/森村泰昌/良知 暁/ロジャー・マクドナルド
発行:CAMP 制作・編集:Na+制作委員会 協力:女子美術大学 大学院GP |