「ふと手にした画集のページをめくる時の緊張と喜びは、初めて入る美術館や画廊に入って空間や作品を目にする時の感覚と似ています。昨今では、画廊や美術館での展覧会情報もかなりオープンになり、事前に見知ったものを追体験するようなことが多くなっているような気もします。その意味では、体験の装置、体験の場としての〈本〉の価値はとても重要だと思います。本を〈読む為の本〉としてではなく〈体験の為の物体〉と捉える、または〈本を読む行為〉を〈物体との関わり〉として捉えることは、今後の美術体験のあり方を考える上でもひとつの有効な手段になるのではないかと僕は思っています。この対談は、本来は、私の作品集の出版関連ということでしたが、時期もずれましたので、図録や印刷物へなみなみならぬこだわりを見せる梅津さんと、改めて、印刷物と作品のことについて(僕の中ではそのキーワードは「体験の仕方」という風に感じています)トークができたらいいなと思いました。」(冨井大裕)
《アーティスト・トーク》
冨井大裕(アーティスト) × 梅津元(埼玉県立近代美術館主任学芸員/芸術学)
「体験としての物体―〈美術〉と〈本〉の可能性」
日 時:2011年11月3日[木・祝] 17:30―19:00
会 場:NADiff a/p/a/r/t 店内
入場無料(予約不要)※30名様以降は立見となりますのでご了承ください。
《追記》
この対談は、冨井大裕作品集『MOTOHIRO TOMII WORKS 2006-2010』(発行者:中山真由美・冨井大裕、テキスト:梅津元)の発売を記念して、当初、2011年3月19日実施として企画されましたが、東日本大震災の影響により延期となりました。その後、本年7月、発行者のひとりである中山真由美さんが逝去されました。中山真由美さんのご冥福を慎んでお祈り致します。延期によりご迷惑をおかけしましたが、ようやく11月3日に実現の運びとなりました。この対談を中山真由美さんに捧げます。
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