この度、NADiff Gallery にて池田みどり展『 I Love You, I Hate You. ―すきよ、きらいよー 』を開催いたします。
注目のフォト・アート・ユニット池田みどりの2010年制作の写真作品『 I Love You, I Hate You. −すきよ、きらいよ− 』の全貌を初公開するとともに、あわせて新シリーズ『HEADACHE』の第一弾を発表します。
『池田みどり』は、写真家の池田晶紀(いけだ まさのり)と美術作家の三田村光土里(みたむら みどり)によるフォト・アート・ユニットです。
お互いの作品の背景にある潜在的な記憶をもとに、変化しても消えずに残る街の空気や匂いを、不確かな物語の断片を演じる架空の女性を通し、懐かしくも新しい、時空を超えたどこか遠い場所のファンタジーとして、写真でドラマチックに視覚化してきました。
『 I Love You, I Hate You. −すきよ、きらいよ−』
板橋区で50年以上、精密板金業を営む工場を舞台に、ミュージカル仕立てのラブ・ストーリー『 I Love You, I Hate You. −すきよ、きらいよ−』が池田みどりによって制作されました。好評の特大ポスターで印象に残っている方も多いことでしょう。
この度ギャラリーではプリント全点を展示するとともに池田みどり写真集第2弾となる作品集をリリースして、その全貌を紹介します。
工場に初めて足を踏み入れたとき、日常から切り離された映画のセットの中にいるような、新鮮な感覚を味わいました。使い込まれた機械や、人々の作業の跡が残る場所には、働く人々の人生と日常の記憶が目に見えない気配となり、どんな人生のドラマがその場所に折り重なってきたのだろうかと、さまざまな空想が膨らみました。
工場の中のそれぞれの部屋には、映画のセットや舞台美術とは違う、現実の人々の毎日が、何ひとつ調和を乱すことなく、自然に息づいている体温がありました。そこで池田みどりは、ラブ・ストーリーを演ずる男女の、人生の悲喜こもごもが交差する架空の舞台を、リアリティを持ったミュージカル・タッチの作風で、その場所に投影しようと試みました。
『 I Love You, I Hate You. −すきよ、きらいよ−』は、異国のミュージカルや歌のタイトルにヒントを得て、揺れ動く男女の気持ちの情景を、ストレートに表現したタイトルです。
一見、殺風景にも見える工場の風景が、恋に落ちた男女のドラマを生き生きと演出し、日常と非日常のはざまを絶妙に描き出す相乗効果が、空間と役者の間に生まれました。そしてそれは、池田みどりが理想とする作品制作の、最高の舞台となってくれました。
『HEADACHE』
新作『HEADACHE』では、1950年代ヨーロッパの小さな雑誌広告をヒントに、池田みどりはこれまでにない新しい世界観に挑戦しています。
三田村のみやげの古雑誌を眺めていた池田が、ふと目に留めたアスピリンの広告写真。
だれの記憶にも残らないような、その地味な広告写真に魅せられた池田と三田村は、日常生活のどこにでも見られる女性の仕草に、物語のようなポートレートのような、不可解で独特なインパクトを見いだしました。
池田みどりという架空の人物は、こういった偶然の出来事の中からアイデアが生まれます。この作品は池田みどりの新しいシリーズのカバーとして、今後へと展開されます。
同時開催となるTRAUMARIS | SPACEでの『編む女の棲む長屋』の展示(7月20日[金]ー8月12日[日])とあわせて、是非ご高覧ください。
協賛/協力:株式会社 スガヌマ、株式会社 ポスター印刷、嘉藤笑子/AAN (Art Autonomy Network)、日立インターメディックス株式会社、菊地敦己(菊地敦己事務所) |